センター試験 世界史B 2013年

第1問 C

問7(通し番号:7)
「法や国家制度について述べた文として下線部が正しいものを選べ」

@イギリス議会は、不当な逮捕や投獄を禁止する人身保護法を制定した。
Aフランスの国民議会は、王政の廃止を宣言した。
Bイギリスでは、チャーティスト運動によって、責任内閣制が成立した。
Cソ連では、スターリンによって、大統領制が導入された。


big5
「下線部が正しいものを選べ、という問題ですが、実質的には各選択肢の正誤判定ですね。正しい説明になっている選択肢を選びましょう。ただ、この問題はどれも盲点になりがちなポイントに関する説明なので、やや難しい問題だったと思います。A君はどうでしたか?」
高校生A
「Cはたぶん違うと思いました。ソ連の大統領制は、かなり後になってからの話で、スターリンの頃では無かったと思います。残る@、A、Bでどれになるかわからず、Bを選びました。」
big5
「Cが誤り、というのはそのとおりです。正しくは、スターリンではなくゴルバチョフです。ソ連で大統領制を始めたのはゴルバチョフで、1990年のことでした。なので、2013年から見ると23年前なんですね。比較的最近の話です。
他の選択肢を順に見ていきましょう。まず@ですが、実はこれが正解になります。ポイントは「人身保護法」ですね。人身保護法は、名誉革命が起きる少し前くらいに定められました。人は、法的な理由なく逮捕・束縛されたとしても、裁判所に訴えれば釈放される、という法律です。当時、イギリス国王が気に入らない人物を逮捕・投獄するという問題を起こしていたため、議会権力が強かったイギリスは国王に対抗するために「人身保護法」を制定しました。
Aは、ややひっかけの要素が強いですが、王政廃止を宣言したのは、国民議会ではなく「国民公会」です。これはフランス革命の話になります。フランス革命というと、バスチーユ牢獄襲撃事件から始り、フランス王ルイ16世と王妃マリ・アントワネットが処刑され、共和制フランスが誕生する、という「王政打倒、共和制樹立」のイメージがありますよね。確かに、結果的にはそうなったのですが、当初の主要目的は王政打倒ではなく、憲法を作って、それに基づいた王政「立憲君主制」を実現することだったんですね。そのために、結成されたのが「国民議会」でした。ただ、国民議会はすぐに名前が変わり「憲法制定国民議会」となっています。教科書などには、「憲法制定国民議会」の名前が書かれることが多いかもしれません。なので、「国民議会」が王政廃止を宣言するわけはないんですね。王政廃止を宣言したのが、その後に革命が過激化した結果結成された「国民公会」です。
最後にBのチャーティスト運動。チャーティスト運動は、19世紀にイギリスで盛んだった労働者による選挙権を求める運動でした。チャーティスト運動はたいへん盛んに行われたのですが、労働者が求めた普通選挙は、すぐには実施されませんでした。ある意味では、あまり成果が出なかった運動、だったんです。もうひとつのキーワード「責任内閣制」ですが、これはチャーティスト運動が始まるもっと前、18世紀前半くらいにイギリス議会政治で確立した制度です。ウォルポール首相の時に、習慣化されたとされています。そもそも責任内閣制とは、行政を行う内閣は議会の信任を得たうえで存在している、という意味です。現代日本の内閣は、責任内閣制と言えます。なぜかというと、国会は大臣の「不信任案」を提出することができ、それが多数決で可決されると、その大臣は辞任させられるからです。現代日本では当たり前の話になっていますが、歴史的には当たり前ではありませんでした。国王に登用された大臣が、議会によって辞めさせられる、ということはほとんどなかったんです。ただ、イギリスだけは例外的に、18世紀というかなり早い段階から責任内閣制が確立していたことに特徴があります。というわけで、チャーティスト運動と責任内閣制には何の関係もありませんので誤りです。」

問8(通し番号:8)
「世界史上の奴隷制ついて述べたaとbの文の正誤の組み合わせとして正しいものを選べ。」

a 古代ギリシアでは、戦争捕虜などを奴隷として使った。
b アメリカ合衆国では、奴隷が綿花などの栽培に従事した。


big5
「2つの文章の正誤判定の問題ですね。2つともわからないと、正解がわからない構成になっています。まずは、A君の回答を聞いてみましょう。」
高校生A
「aはたぶん正しいと思うのですが、はっきりとした自信はないです。bはたぶん正しいです。なので、両方とも”正”だと思います。」
big5
「正解です。考え方も含めて、正解ですね。この問題はおそらく正答率が高かったのではないかと思います。補足のために、簡単に説明しておきます。
まず、aは古代ギリシアの奴隷ですが、まさに問題文の記載のとおりで、戦争で捕えた捕虜は、奴隷として使われることが多かったです。特に、ギリシア人ではない外国人の捕虜は、農場で働かされたそうです。ただ、古代ギリシアの奴隷は、bのアメリカの奴隷と比べると待遇はかなりまともだった、と伝えられています。知識のある奴隷の場合、主人の家の子供の家庭教師を務めたりすることも、少なくなかったそうです。ちなみに、こちらの古代ギリシアのコーナーでも、その話は扱っているので、ご参考までに。
bに関しては、アメリカで黒人奴隷が多数使われていた、ということはおそらくほとんどの受験生が知っていると思います。ここでのポイントは、アメリカの黒人奴隷が強制労働させられた内容です。問題文のとおり、ほとんどが綿花の栽培をさせられていました。一部では、コーヒー農園だったりもしたので、すべて綿花、というほど単純ではありませんが、代表例として覚えておくといいと思います。ちなみに、綿花栽培は今でもアメリカの主要農業の一角を成していて、日本もアメリカ産綿花をかなりの量を輸入しています。」

問9(通し番号:9)
「19世紀にアメリカ大陸で起こった出来事を選べ。」

@ ホームステッド法で、アメリカ合衆国の成年男子に選挙権が与えられた。
A テキサスがアメリカ合衆国領となった。
B アメリカ合衆国の勢力拡大を牽制するために、パン=アメリカ会議が開催された。
C カナダがイギリス連邦の一員となった。

big5
「4つの選択肢の中から、19世紀に発生したイベントを選ぶ、という難易度高めの問題でしたが、どうでしたか?」
高校生A
「全然わかりませんでした。。」
big5
「おそらく、多くの受験生がわからなかったと思います。ですが、選択肢を見ていきましょう。まず、@のホームステッド法ですが、19世紀にアメリカで成立した、というのは正しいのですが、内容が間違っています。ホームステッド法は、5年間国有地で農業した者はその土地を無償で手に入れることができる、という法律なので、選挙権ではありません。ちなみに、リンカーン大統領が署名して発効したので、リンカーン大統領の業績の一つとして数えられています。」
高校生A
「ただで土地がもらえるなんて、すごい法律ですね。僕も農業して土地をもらおうかな。」
big5
「ホームステッド法の狙いは、まさにそこにありました。西部開拓を行う自営農民の数を増やす、というのがアメリカ政府の狙いだったそうです。
続いてAのテキサスがアメリカ領になった、ですがこれが正解になります。アメリカ大陸がヨーロッパ人に発見された後、最初にテキサスを占領したのはスペインでした。その後、メキシコがスペインから独立したためにテキサスもメキシコ領になったのですが、この頃からテキサスにアメリカ系住人が増えてきており、アメリカ系住人はテキサスをメキシコから独立させ、アメリカ合衆国に加入した、という歴史を持っています。アメリカの州の中でもたいへんユニークな歴史を持っているのがテキサス州です。
続いてB。パン=アメリカ会議は、米西戦争が勃発する少し前の1889年にアメリカ合衆国主導で第1回会議が開催されました。なので、選択肢のような「アメリカ合衆国の勢力拡大を牽制する」わけがないんですね。したがってBはいつの話か思い出せなくても、目的が間違っているので誤りと判断できます。
最期のC。そもそもイギリス連邦とは、1931年にイギリスがウェストミンスター憲章を制定して、独立国家の緩やかな連合として始まって現在に至ります。したがって、これは19世紀のできごとではなく、20世紀のできごとです。
と、以上より、何年のできごとだったかはそれほど正確に覚えていなくても、それぞれの内容を知っておけばAかCという二択までは絞れる問題でした。まぁ、正答率が低かった問題だと思います。」

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