Last update:2023,APR,15

古代

古代のアフリカ

あらすじ

big5
「さて、今回は古代にアフリカに存在した国の歴史を見ていきます。これまで見てきたように、古代史の中心はオリエント世界とギリシアが前半の舞台で、最後はローマが主役となる地中海世界が加わる、というのが、世界史の流れになっています。そうなると、こんな疑問を持つ人もいると思います。
「他の地域はどうなっていたの?」と。」
名もなきOL
「それ、私も思います。日本は縄文時代だったんでしょうけど、他の地域もだいたいそんなかんじだったのかしら?」
big5
「答えは「史料不足でわからない」です。古代文明の場合、文字を持たない文明も多かったので、後の時代に何かが残っていないと、存在したことすら忘れ去られてしまう、というのはよくあります。今回取り上げるアフリカは、そのようなエリアの代表例ですね。なので、このページは「古代のアフリカ」と題しましたが、実際にはナイル川の上流で現在のスーダン辺りに栄えたクシュ王国と、その南東で現在のエチオピアがある辺りに栄えたアクスム王国の2つの話になります。
さて、それではいつもどおり、まずは年表から見ていきましょう。」

年月 古代アフリカ世界のイベント 他地方のイベント
前920年頃 クシュ王国成立
前747年頃 クシュ王国がエジプトを征服して第25王朝を開く
前666年頃 エジプト第25王朝がアッシリアに追われ、クシュ王国はナパタに後退
前568年頃 クシュ王国がメロエ(現在のスーダン)に遷都
前1世紀 クシュ王国、地中海・インド洋・アラビア半島貿易で繁栄
後1世紀 アクスム王国がエチオピア高原に成立
333年頃 アクスム王国にキリスト教が入る
350年頃 アクスム王国がクシュ王国を滅ぼす

クシュ王国の歴史

big5
「まず、「世界の歴史まっぷ」さん作成の地図を見てみましょう。」



名もなきOL
「北東にある白線で囲われているところがクシュ王国ですね。現代だとスーダンの辺りですね。」
big5
「はい。古代エジプトから見るとクシュ王国はナイル川の上流、南方にある国でした。古代エジプトの歴史の中ではヌビアとも呼ばれていたエリアになります。古代エジプトのページでも紹介しているように、エジプトのファラオがたびたびヌビアに遠征していますね。
そんなクシュ王国が建国されたのは紀元前10世紀の前920年頃、と考えられていて、現在知られている中では最古の黒人王国になります。当初の首都はナパタという都市でした。エジプトの攻撃をたびたび受けて、エジプト新王国時代には支配されていた時期もありましたが、紀元前8世紀の前747年頃には逆襲に転じ、なんとエジプトを征服。クシュ王がファラオを名乗り第25王朝を開いています。」
名もなきOL
「全盛期を過ぎたとはいえ、あの古代エジプトを支配したんですから、当時のクシュ王国はかなり強かったんでしょうね。」
big5
「しかし、クシュによる第25王朝はあまり長くは続きませんでした。なぜかというと、オリエントを軍事力で支配したアッシリアがエジプトに攻め込んできたからです。第25王朝は抗戦するもののアッシリアには勝てず、最終的にはエジプトを放棄して、元のクシュ王国に引っ込みます。アッシリアもクシュ王国内部まで攻め込むことはしなかったので、クシュ王国は命脈を保ちました。
その後、前568年頃にメロエへ遷都したので、これ以降のクシュ王国をメロエ王国と呼んで区別することもあります。ここでは、クシュ王国で通しますね。
首都のメロエには、クシュ王国時代の遺跡が数多く残っています。代表的なものは、小型のピラミッドです。」

Sudan Meroe Pyramids 2001 世界遺産に指定されているメロエのピラミッド群

名もなきOL
「壊れちゃってますけど、これは確かに小さなピラミッドですね。エジプトの第25王朝時代の名残なんでしょうか?」
big5
「おそらくそうでしょうね。小さなピラミッドは50くらい残っているそうです。メロエには、他にもエジプトの影響を受けたと思われるアモン神の神殿などの遺跡が残っています。OLさんが思ったとおり、おそらく古代エジプト文化の影響を強く受けていたのでしょう。ヒエログリフに似たメロエ文字も使用されているのも、エジプトの影響でしょうね。
もう一つ、メロエの特徴として大規模な製鉄場の遺跡が発見されていることです。この辺りは鉄鉱石の産地も近いので、鉄器製造が盛んに行われていたのであろう、と考えられています。「アフリカのバーミンガム」(バーミンガムは産業革命後のイギリスで製鉄業が?栄した街)というあだ名がつけられるくらいです。
また、北は紅海に面しているので、アラビアやインドなどとも交易をしていたそうです。」
名もなきOL
「アフリカって未開の土地というイメージがあったんですけど、クシュ王国は技術的にもけっこう発展していたのかもしれないですね。」
big5
「そんなクシュ王国でしたが、紀元後333年くらいに南東のエチオピア方面に建国されたアクスム王国の侵攻を受けて滅亡しました。クシュ王国建国から数えるとおよそ1000年という長い歴史を持っていたことになりますね。」

アクスム王国

big5
「さて、次はアクスム王国の話です。まず名前ですが、たまに「アスクム」王国とスとクが入れ替わっている間違いが見受けられます。こんがらかりやすいので、私は「悪住む」と覚えました。決して悪い国ではないので、あまりいい覚え方ではないのですが、ご参考までに。
アクスム人は、元々はアラビア半島の南端(現在のイエメンあたり)に住んでいたセム系民族で、紀元前1世紀頃に紅海を渡ってエチオピア北部のアクスムに移住し、紀元後1世紀くらいにアクスム王国となったのが歴史の始まりだと考えられています。アクスムの王は、旧約聖書に登場するヘブライ王国のソロモン王とシバの女王の子孫を自称していました。つまり、アクスム王国はエチオピアに誕生した国家でありながら、そのルーツはクシュ王国とは違ってアフリカではない、というのが特徴の一つですね。
そんなアクスム王国は333年くらいにキリスト教を受容し、350年頃には上述のクシュ王国を滅ぼしてエチオピア方面の主となり、紅海・地中海貿易で繁栄しました。アクスム王国時代の遺物として有名なのが、現在のアクスム市に残るオベリスク(石柱)です。」

Stela aksum.jpg
CC 表示-継承 3.0, リンク

名もなきOL
「これって、エジプトとかローマに残っているオベリスクによく似ていますね。これも、エジプトの影響なのかしら?」
big5
「私はおそらくそうだと思いますが、定かではありません。石柱の高さは約33mで花崗岩でできており、表面には三日月と太陽が刻まれているそうです。おそらく、アクスム王国がキリスト教を受容する前の時代に建造されたのではないか、と考えられていますね。これは世界遺産にも指定されており、エチオピアの象徴の一つとなっているそうですよ。」
名もなきOL
「そういえば、アクスム王国はキリスト教を受容したんですよね?キリスト教はアクスム王国に広まったんですか?」
big5
「そこも重要ポイントの一つですね。アクスム王国ではキリスト教が広まりました。特に、アクスム王国で広まったキリスト教はコプト教会(コプト正教会とも。英語は"Coptic Orthodox Church or Coptic Christianity")と呼ばれています。キリスト教の一派ととらえてコプト派と呼ばることもありますが、キーワードは「コプト」ですね。基本的にはキリスト教なのですが、その後独自の発展を遂げたカトリックとは細かい点で色々と異なっています。」

CopticCross.jpg
パブリック・ドメイン, リンク


コプト教会の十字架

big5
「7世紀にイスラム教が誕生した時、ムハンマドらは一時的にアクスム王国に匿われたという背景があったので、その後急速にイスラム勢力が広がった時も、アクスム王国はコプト教会を保ち続けました。そのため、中世になってカトリックが宗教的に熱狂して十字軍を興した時も、東方にあるキリスト教国家・プレスター・ジョンの国の伝説の基となっています。」
名もなきOL
「独自の歴史を歩んできたんですね。そういう意味では、日本とちょっと似ているかも。アクスム王国は、どれくらい続いたんですか?」
big5
「イスラム勢力が拡大したことで徐々に国力は衰え始め、940年頃にエチオピアの部族に滅ぼされました。なので、アクスム王国建国が100年くらいだったとすると、約850年の歴史を持っているわけですね。」
名もなきOL
「アクスム王国もけっこう長く続いたんですね。アフリカの歴史ってほとんど知らなかったので新鮮でした。調べてみると、けっこう面白そうですね。」
big5
「そうですね。アフリカは文明が発達していない未開の国というイメージがありますが、全部がそうというわけではありません。アフリカは広いですからね。それぞれの地域にそれぞれの歴史があります。

と、言ったところで今回はここまで。ご清聴ありがとうございました。次回もお楽しみに!」
名もなきOL
「今日もありがとうございました。」

大学入試 共通テスト 過去問

big5
「大学入試共通テストでは、少なくとも平成30年(2018年)以降に古代アフリカの分野は出題されていません。古代史は、最初の方で習うので試験前には内容を忘れがちです。他の分野に比べて優先度は低いものの、試験前に復習しておけば、運よく出題されるかもしれません。」




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