Last update:2017,Jan,7

キューバの現代史 現在進行形

迫る世代交代

big5
「さて、ここまではキューバの歴史を見てきましたが、ここからは新しい試みになります。題して『キューバの現代史 現在進行形』です。歴史というのは、普通は過去の出来事を検証する作業になります。なので、過去を見ることはできても将来を見ることはできません。ここでは、アメリカとの国交回復を実現し、変わろうとしているキューバの最近の、本当にごく最近の歴史を見ていきたいと思います。」
日本史好きおじさん
「変わりゆくキューバといえば、まずは指導者ですよね。現在の指導者はあのカストロの弟のラウル・カストロですが、彼は今何歳でしたっけ?」
big5
「2016年6月3日で、ちょうど御年85歳です。本当に、近い将来に最高指導者が交代するのは間違いないでしょう。ラウル・カストロの後継者には誰がなるのか、は今後のキューバを考えていくうえで重要ですね。」
名もなきOL
「そういえば、こないだキューバの偉い人が日本に来た、っていうニュースを見た気がします。」
big5
「はい、そうです。2016年6月3日、ちょうどラウル・カストロ氏の誕生日ですね。この時、国家評議会第1副議長という役職についているディアスカネルが来日し、外務大臣の岸田文雄氏と外務省で会談しました。ディアスカネルは、ラウル・カストロの後継者と考えられている人物です。今回の来日は、日本の外務省が閣僚級の人物招聘によるもので、それを受けてディアスカネルを中心とするキューバ使節が日本を訪問しました。2015年に、岸田外相がキューバを訪問していますので、それの交換儀礼と見てもいいと思います。
詳細は、外務省のホームページで見ることができます。
こちら
これによると、日本側からの要望として、キューバへの日本企業進出にあたり、二通貨制度や直接雇用、事務所開設要件等が障害となっているので、これらのビジネス環境改善を求めました。ディアスカネルからは、日本企業の技術・品質力を高く評価しているとし、キューバでは新外国投資法に基づいてマリエル開発特区など、特区を設けて外国企業を誘致しているので、日本企業の進出を期待している、と答えたそうです。」
日本史好きおじさん
「そこだけ見ると、日本企業のキューバ進出支援を、キューバが約束した、というふうには感じないのですが。。特区があるのでそこに来てください、って答えただけなんでしょ?」
big5
「確かにそうも取れます。ただ、ホームページの情報は限定的ですので、具体的にどこまで踏み込んだ内容なのか、はっきりとはわかりませんね。
また、ディアスカネルは今回の訪問で、広島と核兵器について述べています。全世界の人々に広島を訪問してほしい、そしてそこで何が起こったのかを知ってほしい、と言及しました。」
名もなきOL
「5月27日にオバマ大統領が広島を訪問したことは、世界でも注目されたニュースになりましたしね。それに対応する意見表明だったのでしょうか。」

カストロの死

big5
「2016年11月25日、キューバ革命を成し遂げたフィデル・カストロが死去したというニュースが発表されました。半年前にも書いたように、90歳という高齢だったので、近いうちに訃報が来るとは思っていましたが、やはりニュースを見た時は少々ショックでしたね。」
名もなきOL
「big5さん、カストロ好きでしたもんね。」
日本史好きおじさん
「社会主義者でもあまり関係ないのですかな?」
big5
「私個人の好き嫌いはもちろんありますが、ここでは中立を心がけています。資本主義・西側陣営の日本から見ると、「社会主義者」という発想になりますけど、私にとって、資本主義か社会主義か、西側陣営か東側陣営かは、さほど問題ではありません。古代ギリシアでも書きましたが国の体制が何であるかは、一つの要因に過ぎないと思うんですよ。黄金時代と評価される時代が僣主制だったり、民主主義アテネでも帝国主義国家になったりしてます。まぁ、社会主義国は言論弾圧、思想の強制をよくするので、好感を持てないことは事実ですが。
さて、キューバ革命の英雄カストロが亡くなったことで、キューバが転換点に立ったことは間違いなしでしょう。政権自体は弟のラウル・カストロに以前から委譲していましたが、ラウルもご高齢なので、完全に世代交代する日も近いでしょうね。」
日本史好きおじさん
「アメリカとの国交回復はどうなるでしょうね?」
big5
「カストロの死はあまり影響はないと思いますが、アメリカ次期大統領のドナルド・トランプ氏が、キューバから譲歩を引き出そうとしていますので、国交回復は延期となるかもしれません。今後の展開が気になるところです。」

2016年経済成長率

big5
「2016年も終わりに近づいた12月29日、日経新聞によると、共産党機関紙「グランマ」が、2016年のキューバの経済成長率はマイナス0.9%になる見込である、と発表したとのことです。主要因としてベネズエラの経済危機を挙げています。その一方で、アメリカとの国交回復による雪解けムードの影響か、観光客の数は増えているので観光関連業は好調とのことです。」
日本史好きおじさん
「社会主義国にしては、不利なニュースを隠さないで報道するのですな。」
big5
「色々な国がありますので、一括にはできません。政治体制は一つの特徴にすぎない、というのが私の意見です。」
イサオン
「私の古代ギリシャでは、評判がよくない「アテネ帝国」の時代、アテネは民主制でしたね〜。それに対して「黄金時代」と評価されているペイシストラトスの時代は僭主制なんですね〜。」
big5
「キューバ政府は、2017年の経済成長率はプラス2%と見込んでいるそうです。アメリカの経済封鎖解除や外資系企業の参入などが上手くいくかどうかがポイントになりそうですね。懸念材料は、やはりトランプ新政権とフィデル・カストロ亡き後のキューバ政府の外交交渉の行方でしょうか。」

キューバの現代史 略年表    
2016年
6月3日国家評議会第1副議長ディアスカネルと日本外相:岸田文雄が日本外務省にて会談
11月25日フィデル・カストロ死去。享年90歳


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