Last update:2021,Sep,25

自由と革命の時代

映像作品篇 パトリオット 考察篇

Patriot promo poster.jpg
By The poster art can or could be obtained from Columbia Pictures., Fair use, Link

small5
「さて、ここでは「考察篇」ということで、映画「パトリオット」で描かれている内容について、より深く考察していくぜ。
ネタバレ注意!
まだ見ていない人は、気をつけてくれよな。ちなみに、導入紹介については、こちらで行っているので、まだ見ていない人はぜひ読んでみてくれ。」
・ベンジャミン・マーティンって実在人物?

・叔母さんの家が燃えた後、一家が引っ越した黒人の集落ってどこ?

・ベンジャミンが独立戦争に参加した理由




ベンジャミン・マーティンって実在人物?

small5
「これは簡単だな。答えはNoだ。架空の人物だぜ。だが、まったくの架空の人物というわけではなく、独立戦争で活躍した複数の実在人物のエピソードを組み合わせて作り上げた「実在しそうな架空の人物」になってるぜ。一番近い経歴を持っているのが、フランシス・マリオン(Francis Marion)という人物だ。」
Francis Marion 001
フランシス・マリオン

big5
「ここで、あえて史実の人物名を使わなかった、というのが「パトリオット」の特徴の一つですね。史実の人物名をそのまま使うと、映画として作っていく中で「史実と反する」という意見が絶対出てきますからね。」
small5
「そうだな。歴史映画特有の問題だな。だが、架空の人物にすれば、少なくとも「映画の主人公は史実の人物と違う」という話にはならない。そもそも、架空の人物だからな。ちなみに、悪役のダビントン大佐にもモデルはいるんだぜ。バナスター・タールトンだ。
Banastre-Tarleton-by-Joshua-Reynolds
バナスター・タールトン

この軍服と兜、ダビントン大佐の騎兵とよく似ているだろ?」


叔母さんの家が燃えた後、一家が引っ越した黒人の集落ってどこ?

big5
「これはシャーロット叔母さんの家が燃やされて、叔母さんと子供たちは海岸近くの黒人の集落に避難することになった。「この集落(島?)って何?本当にこんな集落があったの?」と、多くの人が思うところですね。」
small5
「あの集落は実在する、ガラ島(Gullah)というところだ。調べたところによると、こういう歴史があるそうだ。
(1) 奴隷貿易で連れてこられた黒人奴隷の一部は、ガラ島で農園作業をさせられていたが、奴隷貿易と一緒にアフリカの風土病であるマラリアや黄熱病も持ち込まれた。
(2) 黒人はこれらの病気にある程度耐性を持っていたが、白人はこれらの病気にとことん弱かった。そのため、白人の農園主らは感染を恐れて、離れた別の場所に住むことが多く、ガラ島はほぼ黒人奴隷だけが生活する場所になった。
と、いうことだそうだ。ちなみに、映画の解説の中で「アメリカ映画でガラ島が登場したのは、本作が初めてだ」と言っていたぜ。」
big5
「日本の教科書ではなかなか学べない、アメリカの各地方の歴史ですね。でも、アメリカの中でこのような「ほぼ黒人奴隷だけの島」があった、というのは面白いですね。」
small5
「ただ、ツッコミを一つ入れたくなるのは「ガラ島ならイギリス軍は来ないだろうが、マラリアや黄熱病の心配は無いのか?」ということだ。避難先で病気になったら、それはそれで大変なはずだ。まぁ、そこまで考えたら、ベンジャミン一家の安全な避難先はほとんど無くなってしまうんだが・・。。」


ベンジャミンが独立戦争に参加した理由

big5
「アメリカ独立戦争開戦に至る経緯と、大陸側の大義名分はアメリカ独立革命でも紹介したように、「一方的に課税されるのに、イギリス議会で議決権を持つ議員を出せない」という不満から始まって「ボストン茶会事件」に発展して独立戦争に至った、というのが基本的なのですが、実際には独立に賛成する「愛国派(パトリオット Patriots)」と、反対する「王党派(ロイヤリスト Loyalists)がいた、ということも資料集には書いてますよね。」
small5
「そうだな。映画「パトリオット」では、名前の通り「愛国派(パトリオット)」にスポットライトが当たっている。冒頭のサウスカロライナ州議会でも「愛国派」の意見が多数だったが、その中で「王党派」に近い意見を主張して、戦争参加に反対したのが主人公のベンジャミン・マーティンだった、というのが特徴的だな。」
big5
「そうですね。「王党派」といっても、イギリス国王への忠誠心というものではなく、もっと単純に「自分と家族を戦争に巻き込みたくない」という思想ですよね。ごく普通の、現代人でも理解できる発想です。」
small5
「しかし、目の前でイギリス軍に次男を殺され、家を燃やされ、そして長男は連行されその後間違いなく殺される、という状況になって、ベンジャミンの気持ちが一気に変化した。「戦争に加わらなくても巻き込まれた」わけだからな。そして、ベンジャミンは戦争に加わる。この時の彼の気持ちは「自由のためには独立すべき」というような大義名分ではなく、もっと単純な「これ以上、家族も財産もを失いたくない」という思いだっただろうな。」
big5
戦争に参加したくなくても、巻き込まれるというのは、古今東西共通の原理ですね。」
small5
「そして、戦争に参加する理由は様々だ、というのも古今東西共通の原理だな。」




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