センター試験 世界史B 2014年

第4問 B

問4(通し番号:31)
「皇帝(ア)は、貴族に対し、長いあごひげを剃るように命じた。ひげは古いロシアを象徴すると考えたためである。この命令は、首都(イ)の建設に代表される西欧化・近代化政策の一環だった。」

(ア)イヴァン4世 or ピョートル1世
(イ)モスクワ or ペテルブルク(サンクト=ペテルブルク)

big5
「空欄に当てはまる言葉を選ぶ問題ですね。実質的に、2択問題×2問になっています。」
高校生B
「ひげを剃らないと税金を取られる、というような話と絵を見たような気がします。でも、それは誰の話だったかな・・」
big5
「お、よく覚えていますね。たぶん、その絵とはこれのことですね。」



高校生B
「あ、これです。なんか面白い絵だな〜、と思ったので覚えてました。」
big5
「資料とかに出てくる絵には、重要な歴史事件を象徴していることが多いので、絵を見ながら勉強するのも効率的ですよ。問題を解くために必要な知識は、この絵が誰の政策を表しているか、ということですね。答えはピョートル1世です。ピョートル1世は、問題文にも書いているように、ドイツやフランス・イギリスといった西ヨーロッパ諸国に比べてロシアはだいぶ遅れていると考え、かなり強制的にロシアの西欧化を進めました。その政策はそれなりに成功し、ロシアは北の大国としての地位を確立したので、ピョートル1世は「ピョートル大帝」と呼ばれることもあります。イヴァン4世は、ピョートル1世よりも150年くらい前、16世紀のロシアの皇帝ですね。過激な性格だったので、「雷帝」と呼ばれて人々に恐れられていました。」
高校生A
「でも、ひげさえ剃れば進んでいる西ヨーロッパに追いつける、とは思えないけどな〜」
big5
「もちろんです。ひげを剃るだけで先進国に追いつけるなら、話は簡単ですね。ひげを剃るというのは、精神論的な意味合いだと思います。日本でも、武士の時代が終わった明治時代初期に「断髪令」が出て、ちょんまげは廃止になっています。それと似ていますね。
さて、次は(イ)を見ましょう。ロシアの首都を選ぶのですが・・・・」
高校生A
「今の首都はモスクワですよね。ニュースとかでたまに見ます。ピョートル1世がモスクワを作ったのかな?」
big5
「残念、答えはサンクト=ペテルブルクです。モスクワがロシアの首都になったのは、ロシア革命が起きた1918年です。意外と最近なんですね。それまでは、ピョートル1世が建設したサンクト=ペテルブルクがロシアの首都でした。覚え方としては、ぺテルブルクの「ペテル」と「ピョートル」が実は同じ名前なんです。サンクト=ペテルブルクとは、「聖人ペテロ(Petero)の街」という意味になります。「ピョートル」という名前もアルファベットで書くと「Peter」となります。これをロシア語風に読むと「ピョートル」となります。発音の違いで、読み方が違いますが語源は同じなんです。つまり、ピョートル1世は、自分と同じ名前のキリスト教の聖人の名前を、首都の名前にしたんですね。」
高校生A
「へ〜、「ペテル」と「ピョートル」が同じ言葉で読み方が違うだけ、というのは気づきませんでした。」
big5
「知らないと、なかなか気づけないですね。せっかくの機会なので、これも覚えておくと記憶に残りやすいと思います。ちなみに、地図でサンクト=ペテルブルクとモスクワの場所も確認しておきましょう。」

高校生A
「モスクワって、大陸の中の方にあるんですね。サンクト=ペテルブルクは海に面しているんですね。」
big5
「いい所に気付きましたね。出題はされていませんが、関連事項なのでついでに解説しておきます。サンクト=ペテルブルクは海に面しています。西欧化を促進したいピョートル1世にとっては、内陸の都市よりも海に面している都市の方が、国際的な感じがして良かったのかもしれません。あと、サンクト=ペテルブルクが建設される以前は、このあたりはスウェーデン領だったんです。ピョートル1世は、北方戦争でスウェーデンと戦って勝利し、獲得した土地に首都を建設した、ということも知っておくといいです。」

問5(通し番号:32)
「「歴史書」に関して、歴史書と著者の正しい組み合わせを選べ。」
(歴史書) ローマ建国史(ローマ史) 歴史序説(世界史序説)
(著者) リウィウス(リヴィウス)  トゥキディデス(トゥキュディデス)
@『ローマ建国史』― リウィウス A『ローマ建国史』― トゥキディデス
B『歴史序説』― リウィウス  C『歴史序説』― トゥキディデス

big5
「これはなかなか難しい問題だったと思いますが、ある程度の知識とテクニックがあれば正解までたどり着ける問題です。」
高校生A
「こういう問題って、知らないと解けないタイプだと思うんですが・・・」
big5
「確かに、「知らないと解けない」こともあります。ま、見ていきましょう。まず、知っておいてほしいのが古代ギリシアの歴史家・トゥキディデスですね。名前も発音も難しい人なのですが、本サイトの古代ギリシアでも記載しているとおり、ペロポネソス戦争の歴史を記した『戦史』を書きました。その内容は、客観的な事実の描写や考察にあふれているため、「歴史学の父」とも呼ばれています。『トゥキディデス=戦史』という関係は是非おさえておきましょう。そうなると、トゥキディデスはどれにもあてはまらないので、トゥキディデスが含まれている選択肢はハズレだとわかります。
そうなると、残ったリウィウスが書いたのが『ローマ建国史』か『歴史序説』ということになりますね。」
高校生A
「そこは、やっぱり知らないとわからないと思います。」
big5
「ところが、この問題は推測できるんです。まず、リウィウスの名前を見て、この人はたぶんローマ人なんだ、と予測できます。なぜかというと、名前の最後が「ウス」になっているからです。ローマ人の名前は最後が「ウス」になる、もっと厳密に言うと「ウ段の音+ス」になっていることがとても多いんです。」
高校生A
「そういえば確かに。オクタヴィアヌスは「ヌ(ウ段の音)ス」ですね。ライバルのアントニウスは「ウス」ですね。」
big5
「その他の著名なローマ人も、たいてい「ウ段の音+ス」です。グラックス兄弟も「ク(ウ段の音)ス」、軍制改革のマリウス、オクタヴィアヌスが事実上の帝政ローマ初代皇帝となった時の尊称アウグストゥス、ローマ帝国最大版図を築いたトラヤヌス、哲人皇帝のマルクス=アウレリウス=アントニヌス、ローマ帝国を東西に分解したテオドシウスなどなど。」
高校生B
「古代ギリシア人も、そんなかんじの名前じゃなかったでしたっけ?」
big5
古代ギリシア人は、「エ段の音+ス」か「オ段の音+ス」が多いんです。ペリクレス、ソクラテス、アリストテレス、ペイシストラトス、ミルティアデス、テミストクレス、ヒポクラテスなどなどです。」
高校生B
「そう言われてみると、古代ギリシャ人とローマ人の名前は、似ているようでも違うんですね。」
big5
「そうなんです。と、ちょっと脱線してしまったので話を戻します。というわけで、リウィウスはローマ人だと考えられるので、歴史書を書くとしたら『ローマ建国史』なのでは?と推測することができます。従って、正解は@の『ローマ建国史』=リウィウスになります。
ちなみに、せっかくなのでリウィウスの『ローマ建国史』について、ポイントだけお話しておきます。リウィウスは帝政ローマの初代皇帝アウグストゥスに仕えて、偉大なる地中海帝国ローマを讃える歴史書を著しました。文才のある人だったようで、『ローマ建国史』は物語として美しい内容になっているそうです。ただ、軍事面などにはあまり知識がないようで、完全に誤解している記述や誤った記録を残している、とも指摘されています。
残った選択肢『歴史序説』の作者は、14世紀のイスラム世界の歴史家イブン・ハルドゥーンの著作です。哲学的な視点で歴史を書いたので、歴史哲学の開祖と言われています。」

問6(通し番号:33)
「ドイツが第一次世界大戦前に支配していた植民地を選べ。」
@マーシャル諸島 Aプエルトリコ Bスマトラ  Cタスマニア

big5
「ドイツの植民地を選ぶ、という問題ですね。近代国家としての統一が遅れたドイツはイギリスやフランスと異なり、植民地獲得競争には完全に後れをとっていたので、英仏に比べると植民地は少ないです。これは正解してほしい問題ですね。」
高校生A
「すみません、わかりませんでした。どれも名前は聞いたことあるんですけど。。」
big5
「正解は@のマーシャル諸島です。ドイツが保有している植民地の中で、太平洋にぽつんと浮かんでいる島々がマーシャル諸島でした。マーシャル諸島は、第一次大戦でイギリスの同盟国として参戦した日本がドイツから奪い取り、その後国際連盟から日本の委任統治領として認められています。それから日本が第二次大戦で敗北するまでのおよそ25年間、日本領だった、という歴史があるんです。ちなみに、場所は下の地図の右下のあたりです。」



高校生A
「戦前の日本って、そんなところにまで領土を広げていたんですね。ちょっとビックリです。」
big5
「そうですね。当時の日本は、アジア圏ではかなりの強国だったと思います。さて、残りの選択肢もせっかくなので確認しておきましょう。Aのプエルトリコは、どこの国の植民地で、どの辺にあるかわかりますか?」
高校生B
「プエルトリコって、確かアメリカの人種差別問題で、差別されている人達、という話を聞いたような・・?ということは、アメリカでしょうか?」
big5
「それでほぼ正解です。プエルトリコはカリブ海に浮かぶ島国で、当初はスペインの植民地にされました。その後、米西戦争でアメリカがスペインから奪い取り、アメリカの植民地になっています。現在では、かなりの自治権が認められていますが、一応所属国家はアメリカになります。差別されている、といのは、人種もそうですが、経済格差や政治的格差など、要因は様々で根深いようです。地図で示すと、このあたりです。」



big5
「次はスマトラですね。スマトラはどの辺にあって、どこの国の植民地だったでしょうか?」
高校生A
「確か、昔大きな地震があったような・・?スマトラ沖地震とか、名前を聞いた記憶があります。」
big5
「そうそう、スマトラ沖地震のスマトラです。答えは、インドネシアの大きな島の一つですね。隣にはジャワ島もあります。そして、インドネシアを植民地化していたのはオランダでした。地図で示すと、ここになります。シンガポールとジャワ島の間に、ななめに横たわっている形の島です。」



big5
「さて、最後はタスマニアですが、これはどの辺にあるでしょうか?」
高校生B
「タスマニアって、タスマニアデビルのタスマニアですか?それならオーストラリアです。ということは、以前はイギリスの植民地だったんですね。」
big5
「まさにその通りです。ちなみに、私は先日タスマニアビーフを食べました。オーストラリア本島の南にある島がタスマニア島です。タスマニアの名がセンター世界史で出るのはかなり珍しいですね。」



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